アリゾナ州ツーソン、ダウンタウンと郊外。スペイン、メキシコ領を経てアリゾナ州第2の都市となる。周辺は鉱物に恵まれ、毎年大規模な見本市が開かれる。ツイード移住当時は鄙びた街だったが、現在は人口50万人弱(2000年)、都市圏人口は百万人に達するといわれており、なお増加傾向にある。
近代歯列矯正の歴史とツイード
アングルと出会って以降、共に多くの矯正治療を行ってきたツイードですが、この頃から自らの治療結果に不満を抱くようになります。
1930年、アングルが死去します。ツイードは診療室をアリゾナ州ツーソンに移しました。野球のメジャーリーグや日本のプロ野球選手が冬場にトレーニングをする地として、最近耳にする機会が増えたアリゾナ州は、アメリカの西南部、メキシコと国境を接する所にあり、冬の温暖な気候ゆえ当時からアメリカ人にとって避寒地として知られていました。カリフォルニアとともに、多くの富裕層が自宅や別荘をこの地に持っていました。ツーソンはツイードにとって、終の棲家となります。彼の下には矯正を、エッジワイズ法を学ぼうと、各地から歯科医が集まっていました。
ツイードは新しい地で矯正治療を続けますが、彼は自分が治療した結果に対して、大きな不満を持つようになっていました。彼の不満点は大きく二つに分けられました。一つは、矯正治療後の患者の口元や横顔が治療前より悪くなっていたものがあったこと、もう一つは、矯正装置を外した後の歯並びが非常に不安定なものがあったことです(いわゆる、「後戻り」がしやすいこと)。ここで注目したいのは、彼の2つの不満のうち片方は、歯並びに対するものではなかったことです。彼はこの時点で、歯並びを変えることが患者の口元を中心とした顔のラインやシルエット、(顔貌やプロファイルと呼ばれることが多い)をも変えることに気づき、それらが矯正治療で悪くならないように、さらには矯正治療でより良いものにできるのではないかと考えていたのです。この着目は後に彼に大きな決断をさせることになります。
ツイードは上記のようなことが起こる原因が、歯の植わる顎骨の大きさと、その上に並ぶ歯の大きさのバランスが取れていないからだと考えました。当時の治療は、個々の歯に矯正装置を取り付け、咬み合わせのずれを正し、歯の重なりをほどき、八重歯を他の歯と同じラインに並べていました。この過程で、歯の植わる土台(歯槽骨)に歯が並ぶ場所が足りないと、歯を外側に張り出させたり、歯槽骨を拡大して歯の並ぶ場所を確保していました。こうした治療は歯を扇を開くように外側に張り出させ、歯槽骨を突出させます。その張り出しが顔の皮膚や筋肉を通して顔貌、いわゆる顔の見た目を変化させる結果となっていたのです。しかし矯正治療は顔や頭、顎の骨全体を拡大したり、形を変えるわけではありません。したがって口元部分だけが張り出すことで、顔の他の部分とのバランスが変わり、多くの場合バランスが崩れてしまう結果となったのです。また、過度に拡大された歯並びや歯槽骨は、拡大する力やそれを保持する力を取り除くと、容易に反動を起こし収縮しました。その結果、矯正装置を外すとすぐに歯並びが乱れる、歯並びを維持する保定装置(リテーナー)をいつまでも使い続けないと歯並びが容易に乱れてしまうという問題が起きたのです。
つづく>>